●秋の食育

「食育」が必要とされた背景の一つに「地域の多様性と伝統ある食文化の喪失」という問題があります。

日本は四季に恵まれた自然豊かな国です。季節ごとに行事を行い、そこには必ず季節の食べ物や食べものに対する感謝の気持ちが表されています。
このような食文化を知り、継承することも「食育」の重要なテーマです。

今回は、収穫の季節、秋の食の行事を紹介します。

9月には、「重陽の節句」「十五夜」「秋分の日」などの行事があります。

「重陽の節句」

日本では、1月1日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日と、奇数が重なった日にはお祝いをしてきました。これは、奇数を吉数とする中国から伝わったものです。
中でも9月9日は、一番大きい奇数が重なる日であること、さらに1年を締めくくる節句ということで大切にされていました。

この日は旧暦では10月頃になります。田畑の収穫が行われる時期ですから、豊作に感謝する意味をこめて、栗ご飯を炊いてお祝いしました。また、菊の花をお酒に浮かべて飲むという習慣もありました。秋の花である菊は花びらがたくさん重なっていることから、子だくさん、豊作などをあらわすおめでたい花とされており、そんな縁起のいい花を浮かべて飲むことで邪気を払い、長生きできるようにと願ったのです。

「十五夜」

旧暦の8月15日の月はほぼ満月にあたり「十五夜」、「中秋の名月」と言って、お月見をしてきました。この時期は空気が澄んでいるため月がよく見えるので、眺めて楽しんだのです。現代の暦では9月の半ば頃。今年は9月22日です。
ちょうど収穫が行われる季節でもあり、無事に収穫できたことを祝い、神様に感謝する意味もあったわけです。
この日にお団子をお供えするのは、収穫したばかりの米でお団子を作り、神様に収穫が無事に済んだことを感謝し、翌年の豊作を願ったといわれています。すすきを飾るのも、稲に見たてたものだといわれています。

「秋分の日」

春分の日、秋分の日を中日として、その前後3日間の1週間を「お彼岸」といいます。この期間にご先祖を供養すると極楽浄土に行くことができるといわれています。だからお墓に行くわけですね。
そのときに備えるのが「ぼたもち」や「おはぎ」。
「ぼたもち」と「おはぎ」は、蒸した餅米やお餅に、甘く煮た小豆のあんをまぶしたもの。同じものなのに呼び名が違います。それはなぜでしょう。
お餅にまぶしたつぶあんを、春分のころには春に咲く大輪のボタンに例えて、秋分のころには同じくこの季節に咲きみだれている萩の花に見立てて「ぼたもち」「おはぎ」と呼ぶようになったのです。

美しい四季をめで、自然と収穫に感謝する日本の食文化を大切にしていきたいものです。